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2011年11月2日水曜日

イ・ソンヒの「分かりたいです」、そして漢詩

週刊韓国のカバーストーリー「〔名盤名曲〕 イ・ソンヒ3集『分かりたいです』」(11/1)は、イ・ソンヒの名曲のひとつである「分かりたいです(알고 싶어요)」誕生のいきさつを次のように語っている。(チェ・ギュソン大衆文化評論家)
(驚きの事実にあふれた内容で、興奮すること間違いありません。いやぁ、知らなかった!)

・イ・ソンヒは、「江辺歌謡祭」(1984年)大賞受賞後、1985年のソロ1集から1990年の6集まで発表するアルバムごとに、ヒットパレードを繰り広げた、当代大衆音楽界のブルーチップ(優良銘柄)だった。

・小柄で、爆発的な歌唱力を駆使した彼女は、数多くのヒット曲を量産した。特に、「ヒット曲製造機」で名声が高かったヤン・インジャ(양인자)、キム・フイガプ(김희갑)コンビが作詞、作曲した、1986年の3集収録曲「分かりたいです」は、エキサイティングな事情をもった彼女のビッグヒット曲だ。

・この歌は、聞く人の胸にしっとりと染みとおる素敵なメロディーと、恋に落ちた女性の感性を可愛く表現した歌詞が耳に差しこまれる印象的な歌だ。絶えず愛情を確認したい、女性特有の情緒をよく表わしたこの歌の歌詞は、当代最高の歌手に浮上したイ・ソンヒの優しいボーカルに乗って、実に大きな波紋を起こしたし、今も多くの大衆が愛唱する名曲として遜色ない。

・ところで、私たちが知っているヒット曲には、先に歌ったオリジナル歌手が別にいる場合が多い。誰もイ・ソンヒがオリジナル歌手と信じて疑わないこの歌も、実は彼女よりも2年前に最初に発表したオリジナル歌手がいる。

・初めて発表されたとき、この歌は男性歌手の曲であったし、題名と歌詞も違った。オリジナルの歌手は誰であろうか?
80年代の大衆に、「瞳(눈동자)」、「遥か遠いところ(아득히 먼 곳)」としてよく知られたイ・スンジェ(이승재)が主人公だ。原曲のタイトルは「秋の木々の間で(가을나무 사이로)」だ。イ・ソンヒの「分かりたいです」が、1984年に発表されたイ・スンジェのソロ(アルバム)に収録された曲という事実を知る国民はあまり多くないようだ。

・キム・フイガプが作詞作曲したこの曲は、イ・ス​​ンジェのソロ1集のタイトル曲「遥か遠いところ」の大ヒットにより廃れた悲運の歌だ。

・実は、作曲家キム・フイガプのヒット曲中には、オリジナル歌手とヒット歌手が共存する曲が結構ある。(略)

・題名と歌詞が違う、イ・ス​​ンジェのオリジナルバージョンは、イ・ソンヒの「分かりたいです」と同じくらい、今のような晩秋の季節秋にぴったりだ。しかし、秋に感傷的になる人の心を歌ったオリジナルバージョンの歌詞は極めて常套的だった。死蔵された歌をそのまま捨てることを惜しんだ作曲家キム・フイガプは、江辺歌謡祭の大賞以後ソロとして独立して、トップ歌手にのぼったイ・ソンヒに注目した。そこで1986年に歌の題名と歌詞を修正して、イ・ソンヒに吹き込みをさせて再誕生した曲が初めて途方もない大ヒットを放ち、生命力を獲得した。

・「分かりたいです」のビッグヒットの原動力は、歌詞にある。作詞家ヤン・インジャ(양인자)と再婚した作曲家キム・フイガプは、結婚前に、意中の彼女に自分が書いた平凡な歌詞をまた使うように頼んだ。メロディーを聞いてみた、ヤン・インジャは、男性的視点の歌詞を、「自分」の心を表現するように切ない歌詞に変身させ、イ・ソンヒの優しい音色にのせられて、名曲で面目を一新した。興味深いのは、二人の結婚式場に来たイ・ソンヒに祝歌に願った歌が「分かりたいです」という点だ。これは修正された歌の歌詞が、結婚(する)自分たちの恋愛感情を反映した歌であることを、容易に気付くことができる。

・「分かりたいです」は、3集のタイトル曲でなくても、KBS「歌謡トップ10」の5週連続1位となり、イ・ソンヒに、2回目のゴールデンカップを抱かせたし、一ヶ月の放送回数107回、MBCラジオの音楽チャート15週1位の記録を創り出し、その年のゴールデンディスク賞まで与えた。
イ・ソンヒの最大の魅力は、パワフルな歌唱力に起因する。しかし、「分かりたいです」で聞かせた叙情的な彼女のバラードの歌唱法は、長い余韻を抱かせてボーカリストとしての価値を加える。
驚異的なヒット曲らしく歌の歌詞は、かつて「黄真伊(ファン・ジニ:황진이)が蘇世讓(ソ・セヤン:소세양)を誘惑するために書いた漢詩」という誤解を受けたりした。1995年、朝鮮日報に「靑史紅史」というコラムを連載した作家のイ・ジェウンは、ヤン・インジャの了解を得て歌詞を漢詩で作成し発表したのが原因だった。
この歌は、大衆歌謡の歌詞の書き込み操作の重要性を証明している、80年代最高の恋歌(ラブソング)だった。

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「分かりたいです」とイ・ソンヒの出会いは、大ヒット曲「Jへ」と似た感じがする。忘れられたもの、消されようとしたものに陽をあてたのだから。そして見事に名曲に育て上げたのだ。
ところで、「分かりたいです」の歌詞が、黄真伊(ファン・ジニ)とは全く関係ないということを、今回知り驚きましたよ。つまり、ニワトリと卵の順番がはっきりしたことになるのだが、インターネットには、黄真伊の漢詩をモデルに「分かりたいです」の歌が作られたと誤解しているひとたちがいっぱいいる。わたしも、そのひとりで・・・なんてことだろう。